書名 |
著者 |
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読了日 |
まどろみ消去 | 森博嗣 | 講談社 | 2015-09-24 |
この披露宴のときのビデオ撮影を、あらかじめ式場係に頼んでおいたので、新婚旅行から帰ってきて、すぐにそれを見たけれど、キシマ先生の歌は全部カットされていた。そのことは、僕の人生の中で、最高に悔やまれることの一つといえる。 |
封印再度 | 森博嗣 | 講談社 | 2015-08-02 |
「じゃあ、ちょっと西之園君、ここで待っていてくれる?」犀川は立ち上がった。「私も行きます」萌絵も腰を上げる。「いや、僕だけの方が良い」犀川はすぐに言った。「いえ、私も」「素直にはいと言いますカードだ」「そんなカード、渡していません」 |
詩的私的ジャック | 森博嗣 | 講談社 | 2015-06-20 |
「相手の思考を楽観的に期待している状況……、これを、甘えている、というんだ。いいかい、気持ちなんて伝わらない。伝えたいものは、言葉で言いなさい。それが、どんなに難しくても、それ以外に方法はない」 |
笑わない数学者 | 森博嗣 | 講談社 | 2015-06-02 |
「実は、あの日、パーティのあとで、西之園君がキッチンでサンドイッチ……、のようなもの……を作ったんです。これは、僕の記憶が曖昧なのではありません。記憶は極めて鮮明ですが、彼女の作ったものが曖昧だった」 |
冷たい密室と博士たち | 森博嗣 | 講談社 | 2015-05-21 |
最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。 |
すべてがFになる | 森博嗣 | 講談社 | 2015-04-26 |
生きていることは、それ自体が、病気なのです。病気が治ったときに、生命も消えるのです。 |
黒猫の三角 | 森博嗣 | 講談社 | 2012-12-24 |
「遊びで殺すのが一番健全だぞ」紅子はこともなげに答える。「仕事で殺すとか、勉強のために殺すとか、病気を直すためだとか、腹が減っていたからとか、そういう理由よりは、ずっと普通だ」 |
探偵ガリレオ | 東野圭吾 | 文藝春秋 | 2012-11-25 |
「人間の思い込みというのは厄介なものだ。シャボン玉の中に空気が入っていることは知っているのに、目に見えないがために、その存在を忘れてしまう。そんなふうにして、いろいろなものを人生の中で見落とさなきゃいいがね」 |
科学的とはどういう意味か | 森博嗣 | 幻冬舎 | 2012-10-14 |
特に国内における情報の多くが、「涙と人情」に流された感動ドラマを作ることに終始し、「まずは涙を流そう、でも最後は元気を取り戻してみんなで笑おう」というような感情に流された演出が目立っていたことだ。そういったものが無駄であるとは言わない。人間にとって「気持ち」の影響力は大きい。けれど、いくら感動しても、いくら泣いても、飢えている人を救うことはできない。いくら一時の笑顔があっても、それは「解決」ではない。まして、「人道支援」と「防災」は別問題である。 |
テロリストのパラソル | 藤原伊織 | 角川書店 | 2012-05-09 |
絶望ってどういうときにやってくるか知ってるかい。この世界で動かしがたい事実のあることを知るときだよ。まだあの電気箱のなかの方が希望はあった。いつかはそこからでられるという希望があった。 |
図書館戦争 | 有川浩 | 角川書店 | 2011-10-12 |
「君たちは——公序良俗を謳って人を殺すのか!」それが正義だとすれば、正義とはこの世で最も醜悪な観念だ。 |
ハリー・ポッターと秘密の部屋 | J.K.ローリング | 静山社 | 2011-10-08 |
フォークスや「組分け帽子」が、なんの役に立つのかはわからなかったが、もうハリーは一人ぼっちではなかった。リドルが笑いやむのを待つうちに、ふつふつと勇気がたぎってきた。 |
沖で待つ | 絲山秋子 | 文藝春秋 | 2011-10-02 |
「俺は沖で待つ 小さな船でおまえがやって来るのを 俺は大船だ なにも怖くないぞ」大船かよ。しかし「沖で待つ」という言葉が妙に心に残りました。もちろんこれを書いた頃、太っちゃんに死の予感があったなんてこれっぽっちも思えないのですが。 |
陽気なギャングが地球を回す | 伊坂幸太郎 | 祥伝社 | 2011-09-22 |
本日はお忙しいところまことに申し訳ありません。紹介が遅れましたが、私たちは銀行強盗です。 |
ハリー・ポッターと賢者の石 | J.K.ローリング | 静山社 | 2011-09-21 |
減点なんてもう問題じゃない。それがわからないのかい? グリフィンドールが寮対抗杯を獲得しさえしたら、君たちや家族には手出しをしないとでも思ってるのかい? |
オーデュボンの祈り | 伊坂幸太郎 | 新潮社 | 2011-09-12 |
優午は、それについてははっきりと返事をしなかったが、「ただ」と言った。「ただ、たんぽぽの花が咲くのに価値がなくても、あの花の無邪気な可愛らしさに変わりはありません。人の価値はないでしょうが、それはそれでむきになることでもないでしょう」今日、はじめて人を殺したのだと、少年である桜はそこではじめて告白をする。優午はすでに知っていることであるにもかかわらず、はじめて聞いたという口調で、短い相槌を打った。死よりも詩のほうが良い、と桜は小声で呟いた。 |
六枚のとんかつ | 蘇部健一 | 講談社 | 2011-08-31 |
作者注;「五枚のとんかつ」と「六枚のとんかつ」のトリックは同じものです。どちらか好きなほうをお読みください。 |
リピート | 乾くるみ | 文藝春秋 | 2011-08-23 |
「今から約一時間後の午後五時四十五分に、地震が起きます。三宅島で震度四、東京で震度一です。確認してください。もう一度言います。今から一時間後、五時四十五分です。ジシンがあります」 |
イニシエーション・ラブ | 乾くるみ | 文芸春秋 | 2011-08-03 |
……鈴木くんの言うように、コロコロと自分の意見を変えるのは良くないって私も思う。だけど人間って成長するものだし、そのときに過去の自分を否定することだってあると思うし、それは許されることだとも思う。……自分の言葉に責任を持てるようになるのって、本当は何歳なんだろう? わからないけど、でも私や鈴木くんの年齢で、それができるって思うのは、思い上がりだと私は思う。私たちはまだまだ成長する。なのに自分の言葉に責任を持って、考えを変えないようにするのって、それを無理やり止めようとすることと同じだと思う。 |
儚い羊たちの祝宴 | 米澤穂信 | 新潮社 | 2011-07-28 |
「逃避のために物語を読んでいる、ということですか」「あるいは。しかし逃避よりも、物語的な膜を通じて現実に向き合うことの方が、多いでしょう。ただの偶然を探偵小説のように味わい、何でもない事故にも猟奇を見出すのです」 |
Jの神話 | 乾くるみ | 文芸春秋 | 2011-07-21 |
倫理面での抑制——それは決して期待できるものではなかった。 |
ミステリアス学園 | 鯨統一郎 | 光文社 | 2011-07-02 |
「何するんですか? 公園で」「キスとミステリ講義とどっちがいい?」ぼくは返事に詰まった。「そうか。ミステリ講義か。残念ねえ」「いや、それは」「なに?」「ミステリ講義は歩きながらできるので」亜矢花さんは笑った。 |
NECK | 舞城王太郎 | 講談社 | 2011-06-19 |
人にはしっぽがあるのだ。この事実と顔の皮膚にはたくさん寄生虫がいるってことは大抵の人にとって世界観や人間観が変わるくらいショックなことだけど、もちろん私もショックだったけど!ニキビダニ……ダニって!でも私にとって本当に全てがひっくり返るくらいビックリしたこととは、私の他人より少し長く見える首の、中の骨が、実際に他人より一つ多いっていう事実だ。 |
東京島 | 桐野夏生 | 新潮社 | 2011-06-03 |
女は命を繋ぐ性、などと大袈裟なことを言われると、ついつい片腹痛くなるのは、子産みに縁がないと長く諦めていたせいだった。二十代から三十代初めにかけて、やっと妊娠したと喜んだのも束の間、流産を三度も繰り返した挙げ句、ぱたっと孕まなくなってしまった。なのに、四十六歳にもなって妊娠するとは、いったいどうしたことだろうか。 |
遠まわりする雛 | 米澤穂信 | 角川書店 | 2011-05-23 |
しかし、どうしたことか。言おうと思っているのに、その実、ぜんぜん言える気がしないのだ。こんなことは初めてだった。そして、初めての経験は、これまで解き得なかった疑問を解く大いなる鍵となる。 |
インシテミル | 米澤穂信 | 文藝春秋 | 2011-05-02 |
「それ以上おっしゃっては無粋です。退場者は黙っているべきです」 |
犬はどこだ | 米澤穂信 | 東京創元社 | 2011-04-26 |
「やれるかどうかじゃなく、どうやるか」という彼女の信条は、そのまま私の信条でもあった。その信条がどうにもならない事態の中にあって自身を切りつけてくる経験は、私も持っている。 |
ボトルネック | 米澤穂信 | 新潮社 | 2011-04-14 |
それに比べれば、目の前の鎖の向こうの昏い海など、解放としか思えなかった。顔を覆った手に力がこもり、ひたいに爪が突き立った。ぼろぼろのスニーカーを引きずり、ぼくは歩き出した。鎖に向かって。脳裏に繰り返し浮かんだのは、ボトルネックは排除しなければならない、まず排除しなければならないという言葉だった。 |
乳と卵 | 川上未映子 | 文藝春秋 | 2011-04-10 |
毎日毎日毎日毎日電話して毎日あほや、あたしにのませてなくなった母乳んとこに、ちゃうもんを切って入れてもっかいそれをふくらますんか、生むまえにもどすってことなんか、ほんだら生まなんだらよかったやん、お母さんの人生は、あたしを生まなんだらよかったやんか、みんなが生まれてこんかったら、なんも問題はないように思える、うれしいも悲しいも、何もかもがもとからないのだもの。 |
少女七竈と七人の可愛そうな大人 | 桜庭一樹 | 角川書店 | 2011-03-31 |
わたしたちはいつまでも、互いの名を、呼びあった。これは、いったいなんだったのだろうか。時の流れは、なにより大事なはずのものをすべて、容赦なく墓標にしてしまう。 |
わたくし率 イン 歯ー、または世界 | 川上未映子 | 講談社 | 2011-03-20 |
ああこの形而上が私であって形而下がわたしであるのなら、つまりここ!! この形而中であることのこのわたくし!! このこれのなんやかや! |
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない | 桜庭一樹 | 角川書店 | 2011-03-16 |
あたしは、暴力も喪失も痛みもなにもなかったふりをしてつらっとしてある日大人になるだろう。友達の死を若き日の勲章みたいに居酒屋で飲みながら憐情たっぷりに語るような腐った大人にはなりたくない。 |
水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 | 佐藤友哉 | 講談社 | 2011-03-07 |
ですからどうか、まともな感情と、まともな精神を持って、大切な人をまともな方法でまもりぬいてください。 |
エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室 | 佐藤友哉 | 講談社 | 2011-01-16 |
とても、幸福そうに。瞳に浮かぶ打算的な色は消えていた。寂しさも消えていた。あるのは一つの意志だけ。 |
フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 | 佐藤友哉 | 講談社 | 2010-12-19 |
太陽も、小川も、緑の草も、キラキラして綺麗。輝いていた。揺れていた。何もかもが。繰り返す。それが世界。揺れ自体が一つの創造。そんな長閑な午後。キラキラしている。ピクニックみたい。隣には祁答院唯香。フリッカー。 |
好き好き大好き超愛してる。 | 舞城王太郎 | 講談社 | 2010-12-01 |
僕は柿緒を愛し過ぎるほど愛してみせる。間違っているほど愛してみせる。自分の人生を台無しにしてもいいとバカみたいに思うようにしている。それでいい。パスカルは言った。愛し過ぎていないなら、充分に愛していないのだ。 |
熊の場所 | 舞城王太郎 | 講談社 | 2010-11-07 |
恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない。 |
世界は密室でできている。 | 舞城王太郎 | 講談社 | 2010-10-26 |
「凉ちゃんはたまたま誰にも助けてもらえんかったけど、おめえはいろんな人に助けてもらえるんやってこと、教えてやるで。俺がちゃんと捕まえてやる。おめえ安心して、こっから飛べや」 |
煙か土か食い物 | 舞城王太郎 | 講談社 | 2010-10-21 |
「俺も他の奴もどうせ死んだら煙か土か食い物なんや。生きてるのなんて無駄や。生きてても死んでても変わらんわ。俺かって二郎かって丸雄かって生きてんほうがええんや」「ねえ奈津川さん。人間は死んだら誰かの思い出になるのよ。人間は死んでからも、生きていた証をいろんな形で必ず残すのよ」 |
ディスコ探偵水曜日〈下〉 | 舞城王太郎 | 新潮社 | 2010-10-03 |
「よう、これが合図だ。動き出せ。踊り出せよディスコティック。急いでな。恐怖に立ちすくむような贅沢なんて、お前にはもう許されてないんだ」 |
ディスコ探偵水曜日〈上〉 | 舞城王太郎 | 新潮社 | 2010-09-08 |
この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる? |
ぜつぼう | 本谷有希子 | 講談社 | 2010-08-03 |
俺が、俺が見ている世界はもっと絶望で隙間なくふさがれていて。窒息しそうなくらい絶望で覆われていて。絶望、とにかく絶望しかなくて。 |
生きてるだけで、愛。 | 本谷有希子 | 新潮社 | 2010-07-28 |
なんでよ。他の人はみんななんでもないことのように朝起きて夜寝るっていうのに、自分にとってはそれがまるで無理難題みたいに立ちはだかって意味が分からない。日が出ているうちに起きる。たったそれだけのことがなんでできないんだ? 自分は本当にみんなと同じ生き物なんだろうか? あたしには何が欠落してる? |
アフターダーク | 村上春樹 | 講談社 | 2010-07-08 |
それで思うんやけどね、人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとってはべつにどうでもええことみたい。ただの燃料やねん。 |
そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります | 川上未映子 | 講談社 | 2010-06-23 |
私だって欲しい、私がいなければ文字どおり生きていけない絶対者を、私がいなければ呼吸の出来ない絶対者を、決して私を忘れることのない絶対者を、でもそんなのは絶対にないのであって、いわばそれが悲しい擬似の恋愛であっても私は恐れないでいたい、私はいつか結ぶのである、私がいなければあの目もあの指先も瞬時に息が止まって死んでしまえばいいのに。 |
自由をつくる自在に生きる | 森博嗣 | 集英社 | 2010-06-09 |
自由というのは、「自分の思いどおりになること」である。自由であるためには、まず「思う」ことがなければならない。次に、その思いのとおりに「行動」あるいは「思考」すること、この結果として「思ったとおりにできた」という満足を感じる。その感覚が「自由」なのだ。 |
少女には向かない職業 | 桜庭一樹 | 東京創元社 | 2010-06-07 |
あたしの心が、ガラスみたいな音を立ててパリン、と一度、割れた。 |
イッツ・オンリー・トーク | 絲山秋子 | 文藝春秋 | 2010-06-02 |
お酒を飲んで頃合いで「する?」と一言聞けば断る男なんて滅多なことじゃいない。だがしてしまえばそれっきりで、そうやって私の周りからは男友だちが一人ずつ姿を消していくのだった。それはパンをトーストするのと同じくらい単純なことで、理由も名前もない、のっぺらぼうのトーストは食べてしまえば実にあっけらかんと何も残らないのだ。 |
海辺のカフカ | 村上春樹 | 新潮社 | 2010-05-28 |
彼女はそのとき君を捨てるべきじゃなかったし、君は彼女に捨てられるべきじゃなかった。でも起こってしまったことというのは、粉々に割れてしまったお皿と同じだ。どんなに手を尽くしても、それはもどどおりにはならない。そうだね? |
プラナリア | 山本文緒 | 文藝春秋 | 2010-01-24 |
次に生まれてくる時はプラナリアに。 |
さよなら妖精 | 米澤穂信 | 東京創元社 | 2009-12-22 |
しかしそれらが自分には残されているのだと、おれはまだ、信じることができないでいた。 |
ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 | 村上春樹 | 新潮社 | 2009-12-02 |
僕の考えていることが本当に正しいかどうか、僕にはわからない。でもこの場所にいる僕はそれに勝たなくてはならない。これは僕にとっての戦争なのだ。 |
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 | 村上春樹 | 新潮社 | 2009-11-13 |
「僕の言いたいのは、こういうことなんです。ある種の下品さは、ある種の淀みは、ある種の暗部は、それ自体の力で、それ自体のサイクルでどんどん増殖していく。そしてあるポイントを過ぎると、それを止めることは誰にもできなくなってしまう。たとえ当事者が止めたいと思ってもです」 |
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 | 村上春樹 | 新潮社 | 2009-11-05 |
でもね、ねじまき鳥さん、人生ってそもそもそういうものじゃないかしら。みんなどこかしら暗いところに閉じ込められて、食べるものや飲むものを取り上げられて、だんだんゆっくりと死んでいくものじゃないかしら。 |
半落ち | 横山秀夫 | 講談社 | 2009-10-18 |
だから、自殺ではなく、自首する道を選んだ。汚辱に塗れることを覚悟して。人として、警察官として、尊厳と誇りを引き裂かれることを覚悟して。 |
青酸クリームソーダ | 佐藤友哉 | 講談社 | 2009-10-09 |
「怒るのは楽だよね。スカッとするよね。スキッとするよね。でもそれだけ」 |
グレート・ギャツビー | スコット・フィッツジェラルド | 中央公論新社 | 2009-10-01 |
父が訳知り顔で述べ、僕がまた訳知り顔で受け売りしているように、人間の基本的な良識や品位は、生まれながらに公平に割り当てられるわけではない。 |
乱暴と待機 | 本谷有希子 | メディアファクトリー | 2009-09-22 |
「……思いついた。お前に一番ふさわしい復讐。お前にとってこの世で最も辛い復讐だ。……見てろ」 |
パーク・ライフ | 吉田修一 | 文芸春秋 | 2009-09-04 |
テレビのボリュームを上げていれば、ビン・ラディンもブッシュもパウエルも、シャロンもアラファトもニュース解説者も、難しい言葉を並べ、あたかもその言葉が思考を生んで、生まれた思考で何かが起こっているように思えるが、その音を消してみれば、人間の思考などどこにも見えず、ただ歩き、座り、横たわる人間のからだしか映っていない。 |
秋季限定栗きんとん事件 | 米澤穂信 | 東京創元社 | 2009-08-27 |
ぼくが白旗を振れば振るほど、内心との乖離がいやみになる。心の中で相手を馬鹿にする気持ちが、積もって腐る。 |
夏季限定トロピカルパフェ事件 | 米澤穂信 | 東京創元社 | 2009-08-17 |
それはまるで、綿菓子のよう。甘い嘘を膨らませたのは、ほんの一つまみの砂糖。 |
春季限定いちごタルト事件 | 米澤穂信 | 東京創元社 | 2009-08-11 |
諦念と儀礼的無関心を自分の中で育んで、そしていつか摑むんだ、あの小市民の星を。 |
町長選挙 | 奥田英朗 | 文芸春秋 | 2009-08-04 |
血走った目をした中年男たちを見ていたら、抵抗するのが怖くなった。生活がかかっているとは、きっとこういうことなのだろう。人間がルールを守るのは、自分に害が及ばないときだけだ。 |
偽物語(下) | 西尾維新 | 講談社 | 2009-08-01 |
こんな平和で暢気な国の、普通の学校教育を受けただけでも、いずれ知る——正義なんて存在は所詮、新たな正義に打倒されるための前振りにしか過ぎないということを。 |
偽物語(上) | 西尾維新 | 講談社 | 2009-07-26 |
「間違えた。よかったわね、私の間違いを指摘できて。一生の自慢でしょう?」「なんだその斬新な間違いの認め方!」 |
スカイ・イクリプス | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2009-07-22 |
涙なんて出なかった。きっと怖かったからだろう。怖ければ、悲しくない。悲しむ暇なんてない。悲しいことは、怖いことよりは、ずっと幸せだ。 |
クドリャフカの順番 | 米澤穂信 | 角川書店 | 2009-07-14 |
ネルソンが、英国は諸君がその義務を果たすことを期待するっていう旗を掲げたとき、ネルソンは自分一人でフランスに勝てるとは思っていなかった。期待ってのは、そうせざるを得ないどうしようもなさを含んでいなきゃどうにも空々しいよ。 |
四畳半神話体系 | 森見登美彦 | 角川書店 | 2009-06-30 |
ドアを開け、入り、四畳半(n)を横切り、窓を開け、乗り越え、四畳半(n+1)を横切り、ドアを開け、入り、四畳半(n+2)を横切り、窓を開け……この作業が延々と続く。 |
パン屋再襲撃 | 村上春樹 | 文藝春秋 | 2009-06-20 |
起ったことはもう起ったことだし、起っていないことはまだ起っていないことなのだ。 |
夜は短し歩けよ乙女 | 森見登美彦 | 角川書店 | 2009-04-04 |
この広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です。 |
目薬αで殺菌します | 森博嗣 | 講談社 | 2009-03-09 |
私が一番知っている人間は自分だったし、考えていることがわかるのも自分だけだ。だから、その醜さ、嫌らしさ、愚かさばかりが目についた。目を背けたくなるようなものたちが、ずっと私に纏いつき、躯を締めつけるように圧迫していたのだ。だって、私は人間の中にいるのだから。 |
ひとかげ | よしもとばなな | 幻冬舎 | 2009-02-25 |
だからね、誰か神様みたいなこの世の決まりごとの担当の人がいて、これはあんまりだから絶対あってはいけないことだ、とか、この人はいい人だからひどい目にあわせないであげよう、とか、この人はここまでなら大丈夫だろうとか、見ててくれればいいのに。でもいないの。 |
不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界 | 西尾維新 | 講談社 | 2009-02-22 |
「ぼくは決して死にたくはないんですけれど——一方で、ぼくみたいな奴は死んだほうがいいんじゃないかとも思うんですよね」 |
太陽の塔 | 森見登美彦 | 新潮社 | 2009-02-16 |
ぱっと見るだけなら、そいつは他の羊とあまり変わらないように見えるだろう。でもよく観察してみると、そいつはひたすら黙々と、すごく凝った形のうんこをしているのだ。 |
刀語 第十ニ話 炎刀・銃 | 西尾維新 | 講談社 | 2009-02-11 |
そもそもきみは歴史とは何だと思う? |
刀語 第十一話 毒刀・鍍 | 西尾維新 | 講談社 | 2009-02-10 |
不快そうに眉を顰めて「何をしておるか、このたわけが」と言う。「腹心は歩くとき、あるじと手を繋ぐものだ」 |
刀語 第十話 誠刀・銓 | 西尾維新 | 講談社 | 2009-02-08 |
ありゃあ長生きできない生き方だ。すぐに死んじゃうよ。勝ち負けを重んじるのも重んじるので、目的のためならありかもしれないけれど、でも人間の最大の目的って、生きることだろう? |
刀語 第九話 王刀・鋸 | 西尾維新 | 講談社 | 2009-02-07 |
人間、考えることはできても。考えないことは、実は意外と難しい。 |
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2 | 入間人間 | アスキー・メディアワークス | 2009-02-06 |
「まーちゃんはさ、僕の何処が好き?」「みーくんなとこ!」 |
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん | 入間人間 | アスキー・メディアワークス | 2008-12-11 |
「ばいばい」誰かが何かを口にする前に、僕は境界を跳び越えた。人生で最も枷の外れた時間の始まり。 |
愚者のエンドロール | 米澤穂信 | 角川書店 | 2008-12-07 |
俺はそれを、壊したら人生が終わるほど高価な美術品を見るような目で見た。様々なことが俺の脳裏に渦巻いた。 |
刀語 第八話 微刀・釵 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-12-04 |
「違うな」とがめは笑う。「運命は自分で言い張るもの、だ」 |
刀語 第七話 悪刀・鐚 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-30 |
「何を勝手に、わたしの肌に触っているのですか――この、草が」 |
刀語 第六話 双刀・鎚 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-29 |
流れに身を任せる——あんたの言い方を借りればそういうことだけど、でも、本当の意味で流れに身を任せるなんてことのできる人間が、この世にどれだけいると思う? |
刀語 第五話 賊刀・鎧 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-16 |
わたしは惚れた女に素顔を晒せんような男にこの身を任せるつもりなどさらさらない! |
氷菓 | 米澤穂信 | 角川書店 | 2008-11-12 |
全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていく。 |
刀語 第四話 薄刀・針 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-10 |
「おれは炭を燃料に使う土製の焜炉かよ!」 |
刀語 第三話 千刀・鎩 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-09 |
「あなたを救えなかったことを――許してください」ひどく落ち着いた口調だった。「けれど、どうか、あの子たちのことは――許してあげてください」 |
刀語 第二話 斬刀・鈍 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-07 |
「ああ。ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな」 |
刀語 第一話 絶刀・鉋 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-11-06 |
「鑢七花。わたしに惚れていいぞ」 |
あなたを感じる | 物部深雪 | 幻冬舍 | 2008-11-03 |
私の心の中で開きかけたドアは、まだ閉められない。けれど、開ききったドアより、開きかけたドアを閉める方がよっぽど難しい。 |
江利子と絶対 | 本谷有希子 | 講談社 | 2008-10-21 |
中から瀕死状態の猫を掴み上げ、今度はそれを多田の目の前に無造作に投げ捨てた。「ホラ、こんなになってもコイツは生き続けるしかないのよ? あんたは自分で自分を見限ればいつでも死を選べるじゃない。人間に生まれたこと神様に感謝しなさいよォ」 |
人間は笑う葦である | 土屋賢二 | 文芸春秋 | 2008-10-15 |
わたしの生活は恵まれていない。出勤するときは途中で喫茶店に寄り、「さあ、これから仕事をするぞ」と何度もいい聞かせてからでないと大学に行けない。帰宅するときも喫茶店で「さあ、これから家に帰るぞ」といい聞かせないと帰ることができない。 |
とかげ | 吉本ばなな | 新潮社 | 2008-10-14 |
ただ怖いのは、柳の枝が陽にさらされては次の瞬間大風に揺れるように、桜が咲いては散るように、時がたっていくこと。西日のさしこむこの部屋に、寝転んでビデオを見ている彼の背に、この空気に別れを告げて夜がやってくること。ただそれだけのことがいちばんかなしい。 |
われ笑う、ゆえにわれあり | 土屋賢二 | 文藝春秋 | 2008-10-13 |
困難であるだけに、禁煙に成功した時の報いは大きい。タバコをやめると別世界が開けてくる。食べ物がおいしくなり、空気がおいしくなり、なりよりもタバコがうまくなる。 |
クレィドゥ・ザ・スカイ | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2008-10-11 |
愛なんて錆のようなものだ。それが、綺麗な営みだと、錆が思い込んでいるだけ。 |
牛への道 | 宮沢章夫 | 新潮社 | 2008-10-06 |
「棒で殴るぞ」たしかに棒で殴られるのはいやだが、べつに原始人が喧嘩をしているわけではないのである。 |
フラッタ・リンツ・ライフ | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2008-10-01 |
結局、大人って奴は、自分が好かれたい、という動機しか持っていない。だから、自分を好きになってくれる可能性のあるものにしかアプローチしない。 |
ダウン・ツ・ヘヴン | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2008-09-27 |
僕は空で死ぬことを望んでいるのだ。今、それに気がついた。雲の上にある天国へ、墜ちていけば良い。簡単だ。 |
ナ・バ・テア | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2008-09-23 |
これだけ願っているものが手に入らないはずはない。それだけが、希望。それだけが、目的。 |
国境の南、太陽の西 | 村上春樹 | 講談社 | 2008-09-17 |
そのときの僕にはわかっていなかったのだ。自分がいつか誰かを、とりかえしがつかないくらい深く傷つけるかもしれないということが。人間というものはある場合には、その人間が存在しているというだけで誰かを傷つけてしまうことになるのだ。 |
そして二人だけになった | 森博嗣 | 新潮社 | 2008-09-02 |
心が死にそうだ。彼を愛していたはずの私は……、どこに隠れてしまったのだろうか。その私が、どこかで隠れて、泣いている。 |
完全自殺マニュアル | 鶴見済 | 太田出版 | 2008-08-28 |
自殺はとてもポジティブな行為だ。 |
工学部・水柿助教授の解脱 | 森博嗣 | 幻冬舎 | 2008-08-28 |
心安らかに。しかし、自分の心を安らかにしてくれるのは、自分である。恵まれている。しかし、誰も恵んでくれたわけではない。自分に恵むのは自分だけである。他人に求めてはいけない。たとえ、最愛の人であっても、求めてはいけない。自分に与えられるのは自分だけだ。 |
墜ちていく僕たち | 森博嗣 | 集英社 | 2008-08-26 |
温泉に男がいては駄目なのだよ、君。わかるかい? 特に私らがいるときは駄目だな。半径一キロ以内にいてほしくないぞ。男だけ死滅させるガスとかあったら、絶対使ってやるからな。 |
アルゼンチンババア | よしもとばなな | 幻冬社 | 2008-08-20 |
今までこの世にいなかった人が縁あってこの世にやってきて、自分を好きになってくれた、それだけでもう胸がいっぱいだ。 |
スカイ・クロラ | 森博嗣 | 中央公論新社 | 2008-08-18 |
落ちていくときの方が、何かから解放された気持ちになれる。きっと、生きている、という不自由さからだろう。生物にとって、それよりも大きな束縛はない。 |
うたかた/サンクチュアリ | 吉本ばなな | 角川書店 | 2008-08-11 |
人を好きになることは本当にかなしい。かなしさのあまりその他のいろんなかなしいことまで知ってしまう。果てがない。嵐がいても淋しい、いなくてももっと淋しい。いつか別の恋をするかもしれないことも、ごはんを食べるのも、散歩するのもみんなかなしい。 |
腑抜けども悲しみの愛を見せろ | 本谷有希子 | 講談社 | 2008-08-09 |
唯一無二の存在。あたしじゃなければ駄目だと。あたし以外は意味がないと。あたしだけが必要だと。誰か。あたしのことを。あたしを。特別だと認めて。 |
きみとぼくが壊した世界 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-08-02 |
何かに殉じるということが美しいばかりだとは、やはり僕は思わないが、しかし自らが生み出すもののために自らの命を絶つ行為に、観察者として一片の美しさも見出さないわけにはいかないだろう。 |
傷物語 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-07-28 |
美しくも。綺麗でもない。それが僕の人生なら。この美しいものを生かすために——僕は死ぬべきじゃないか。 |
死神の精度 | 伊坂幸太郎 | 文藝春秋 | 2008-07-24 |
これから切ろうとしている髪の毛に、「せっかくだから」と装飾をほどこすのと同じだ。いずれ、切られることに変わりはないのだから、何をしようと意味がない。床屋が髪の毛を救わないように、私は彼女を救わない。 |
クワイエットルームにようこそ | 松尾スズキ | 文藝春秋 | 2008-07-14 |
これ以上の暴力があるだろうか。「残念だ」って、なんであんたの残念をわたしが一生引き受けなければならんのだ。 |
ナイン・ストーリーズ | J.D.サリンジャー | 新潮社 | 2008-07-08 |
エズミ、本当の眠気を覚える人間はだね、いいか、元のような、あらゆる機——あらゆるキ—ノ—ウがだ、無傷のままの人間に戻る可能性を必ず持っているからね |
不気味で素朴な囲われた世界 | 西尾維新 | 講談社 | 2008-03-31 |
——とてもよく、眠れましたよ |
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド | 村上春樹 | 新潮社 | 2008-03-24 |
ウィスキーというのは最初はじっと眺めるべきものなのだ。そして眺めるのに飽きたら飲むのだ。綺麗な女の子と同じだ。 |
ダンス・ダンス・ダンス | 村上春樹 | 講談社 | 2008-02-25 |
きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ。そして固まってしまったものを少しずつでもいいからほぐしていくんだよ。まだ手遅れになっていないものもあるはずだ。使えるものは全部使うんだよ。ベストを尽くすんだよ。怖がることは何もない。 |
重力ピエロ | 伊坂幸太郎 | 新潮社 | 2008-02-11 |
春が二階から落ちてきた。 |
スプートニクの恋人 | 村上春樹 | 講談社 | 2008-01-31 |
物語というのはある意味では、この世のものではないんだ。 |
波のうえの魔術師 | 石田衣良 | 文藝春秋 | 2008-01-27 |
数よ、泣き叫ぶがいい。 |
空中ブランコ | 奥田英朗 | 文藝春秋 | 2008-01-21 |
人間の宝物は言葉だ。一瞬にして人を立ち直らせてくれるのが、言葉だ。その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。 |
イノセント ワールド | 桜井亜美 | 幻冬社 | 2008-01-18 |
あたしを悲しませたり、喜ばせたりすることができるのはあんただけ。それが入ってきた時、心まで優しくつながれると思えるのはあんただけなの。 |
暗黒童話 | 乙一 | 集英社 | 2008-01-13 |
傷口からあふれてくる、どうしようもない生命の力。 |
回転木馬のデッド・ヒート | 村上春樹 | 講談社 | 2007-12-05 |
いちばん重要なことはまわりの大人たちの成熟し屈曲した様々な種類の感情の放射から子供を守る責任を誰がひきうけるかというところにある。誰もがその責任からしりごみしたり、子供に対してみんなが良い顔をしたがるとき、その子供は確実にスポイルされることになる。 |
娼年 | 石田衣良 | 集英社 | 2007-12-02 |
欲望の秘密はその人の傷ついているところや弱いところにひっそりと息づいている |
ηなのに夢のよう | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-29 |
何度口にしても足りないと感じる言葉だった。「ありがとう」 |
λに歯がない | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-28 |
「もし、可能ならば、自殺するときには、相談してほしい」 |
εに誓って | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-23 |
生きてしまえば、ただの生きもの、死んでしまえば、ただの物体。 |
レタス・フライ | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-20 |
正直に告白すれば、私はいつも、この種のことを考えないようにしている。常に、予感はあるのに、予想しないようにしている。何故だろうか。多分、きっと、これしか自分を防衛する手段を知らないからだろう。 |
τになるまで待って | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-18 |
「不思議なままによくしておけるね」加部谷は言う。「ああ」「ちぇ……、しょうがないなあ」「加部谷は、ほかに不思議がないのか?」 |
θは遊んでくれたよ | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-14 |
彼は全員の顔をスキャンした。「一つ注意をしておきたいことがあります。これは、事実ではない」 |
φは壊れたね | 森博嗣 | 講談社 | 2007-11-10 |
推論とは、その推論を組み立てた本人にとっては真実でも、他の者にとっては、あくまでも一つの予測、あるいは予感にすぎない。そんなもので、犯人を指摘することは、極めて原始的であり、封建的な社会で横行したある種の犯罪と考えても、けして間違いではない |
春の完成 | 大鋸一正 | 河出書房新社 | 2007-11-08 |
握った手のひらに花びらが摑めたり、摑めなかったりするように、そこに何かがあったとしても、それはわたしの選ぶものじゃない。 |
BG、あるいは死せるカイニス | 石持浅海 | 光文社 | 2007-10-27 |
私は世界を変えてみせる。 |
キマイラの新しい城 | 殊能将之 | 講談社 | 2007-10-22 |
わたしは落胆の色を隠せなかった。すると、エルサレムはまだ奪還できていないのか……。 |
羊をめぐる冒険 | 村上春樹 | 講談社 | 2007-10-15 |
しかし僕はまだ十七歳で、すべてに絶望するには明らかに若すぎた。 |
1973年のピンボール | 村上春樹 | 講談社 | 2007-09-30 |
誰もが自分のシステムに従って生き始めていた。それが僕のと違いすぎると腹が立つし、似すぎていると悲しくなる。それだけのことだ。 |
ボディ・レンタル | 佐藤亜有子 | 河出書房新社 | 2007-09-21 |
関節人形にしてみれば、死すらもパロディーになる。 |
子供たち怒る怒る怒る | 佐藤友哉 | 新潮社 | 2007-09-18 |
その苦しみを知れ。自分にまったく関係ないことで疎外される苦しみを知れ。 |
1000の小説とバックベアード | 佐藤友哉 | 新潮社 | 2007-09-15 |
「書けるに決まってますよ。だって、小説を書くような心で書いたら、それはもう、小説なんですから」 |
ヒコ | 大鋸一正 | 河出書房新社 | 2007-09-11 |
「これはあなたのものでいらっしゃいますか?」 |
化物語 | 西尾維新 | 講談社 | 2007-09-09 |
じゃ、じゃあ、こうなると僕はあの台詞を言われるのか……? 伝説の、『きみにお父さんと言われる筋合いはない!』を! |
スクールアタック・シンドローム | 舞城王太郎 | 新潮社 | 2007-09-02 |
暴力は伝染する。 |
風の歌を聴け | 村上春樹 | 講談社 | 2007-08-31 |
結局のところ、文章を書くことは自己療養の手段ではなく、自己療養へのささやかな試みにしか過ぎない。 |
魍魎の匣 | 京極夏彦 | 講談社 | 2007-08-28 |
超能力は脱オカルト、占いは準オカルト、霊能は真オカルト、宗教は超オカルト、になるかな。 |
葉桜の季節に君を想うということ | 歌野晶午 | 文藝春秋 | 2007-08-10 |
射精したあとは動きたくない。 |
みんな元気。 | 舞城王太郎 | 新潮社 | 2007-07-28 |
これからいろいろあるだろうし、あるけれど、愛されて起こるいろいろだから、きっと大丈夫。でもそんなふうに言えば、実は全てがそうなのだ。みんな大丈夫。みんな元気。 |
SPEEDBOY! | 舞城王太郎 | 講談社 | 2007-04-09 |
信じるんだ。限界はない。 |
キッチン | 吉本ばなな | 角川書店 | 2007-04-01 |
家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる。 |
大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章 | J.D.サリンジャー | 新潮社 | 2007-02-28 |
彼は詩人なんだ。本物の詩人なんだ。たとえ一行も詩を書かないにしても、その気になれば、耳の裏の形一つででも、パッと言いたいことを伝えることのできる男なんだ。 |
少女地獄 | 夢野久作 | 角川書店 | 2007-02-28 |
どうせ僕等は、めいめい勝手なゼンマイ仕掛けの人形みたいなもんですからね。そのゼンマイのネジが解けちゃってヨボヨボになって死んじゃうだけの一生なら、まったく詰まらない一生ですからね。 |
松浦純菜の静かな世界 | 浦賀和宏 | 講談社 | 2007-02-17 |
私には分かるよ。あなたの気持ちが。殺したい奴って、確かにいるもの。 |